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くちびるにはなうた

2006年4月〜求人誌「週間FREE」誌上で連載中

毒も花もある日々のうた

これまでしてきた仕事や、今の仕事やくらしについて書いています

2008年 4月8日

くちびるにはなうたーvol.98 「友達の赤ちゃん」

高校時代からの友人に赤ちゃんが生まれた。そのママともう一人の友達と私の3人で、暇があると集まって、長い時間をかけてご飯を食べて話をするという習慣が何年も続いています。大学就職結婚出産。その都度、分かれ道があって、決心やトラブルがあって、どこにでもあるような、女性が好きそうなイタリアンレストランで、笑ったり泣いたりしてきました。その友達に子供ができるとは。産後2週間。本人もイマイチ実感がわかない、という状態で、3人はまた顔を合わせました。ふーん。眉間とあごのところが友達にそっくり。というかおんなじかたち。そもそも、彼女の眉間とあごのところが赤ちゃんみたいだと、ずっと思ってきました。もう一人の友達が、「なんだか自分の子が生まれたみたいにうきうきしちゃってさー」と、何やらかわいらし過ぎたり、ぴかぴか過ぎるよだれかけや写真立て、迷いに迷った挙げ句に支離滅裂になったプレゼントを広げました。だっこさせてー!と言って一緒に写真を撮ると、その子と親子みたいにも見えました。大事なものを見る目。抱く手。人はこうして優しくなるんだな。「3人で並んでベビーカー押して散歩しようよ!」と言われてもね。そうだね。実感は、本人にも、私たちにも突然わくのではなくて、その子と一緒に育っていくんでしょう。未来に。ピース。

♪「芽吹き」

風に
雨に
応え
青く

よもぎ
こごみ
ふきのとう

苦い
春に
薫る
強く

2008年 4月8日

くちびるにはなうたーvol.99 「184日」

東京郊外の一軒家で、女3人の同居生活を始めて、一年が経ちました。その間、半年だけ一緒に暮らして、結婚してニューカレドニア島に移住をした人がいました。一緒にいた日々を音楽に残しておこうと、残った2人で録音をして、一時帰国をした彼女に渡しました。3曲入りCDのタイトルは「184日」。3人の人生が偶然重なった日数です。1曲目はみんなで練習していたモーツアルトのピアノ連弾曲。あとの2曲はオリジナル曲で、結婚を祝い、日々を愛でる歌です。ジャケットには、3人でノースリーブのワンピースを着て出掛けた日や、浴衣姿の写真を使い、季節感を感じさせることも忘れませんでした。この感傷的なCDを、彼女は持ち歩いているノートブックで再生し、笑ったりちょっと泣いたりしながら聞いては、「ああ、もう。」とまとまらない感想を口にしていました。ニューカレドニア島でこのCDを聞いて、3人の楽しくて騒がしい日々を懐かしむ彼女を想像しながら、私は近くの駅で彼女に手を振ったのでした。ピース。

♪「春の嵐」

その人は
南の島からやってきた
桜の季節にやってきた
こっちは乾いてるねー
と浅黒い顔で笑ってた

その人は
春の風と雨に吹かれて
大きなスーツケースと
南の島に帰っていった
ふるさとの島は雨の中

2008年 4月13日

くちびるにはなうたーvol.100 「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」

シンガーソングライターのNUU(ぬう)さんの、新しいアルバムに参加しました。草野心平さんという詩人の詩8編に曲をつけて歌うアルバム「つんつん つるんぶ つるんぶ つるん」の中の1曲です。曲のタイトルが長い。「第八月満月の夜の満潮時の歓喜の歌」。草野心平さんは蛙の詩人とも言われているそうで、蛙についての詩がたくさんあるそうです。この「第八月〜」(さすがに以下省略します)は、この夜に蛙が合唱している様を詩にしたもので、「14人以上の人物が同時に唱うべき詩」と注意書きが添えられています。詩の内容はというと、
ぐりりににぐりりににぐりりにに
るるるるるるるるるるるるるるる
ぎやッぎやッぎやッぎやッぎやッ
と続いていくのです。これを14人以上の人で歌うと、蛙が合唱しているように聞こえるかどうか・・・はお楽しみに。私もまだ完成したものを聞いていないのです。ぜひ満月の夜の蛙に出会ってください。
『つんつん つるんぶ つるんぶ つるん』
詩 草野心平 唄 NUU/発売日:2008年5月28日
税込価格:\1,800-/品番:DDCZ-1527

♪「見上げる」

もりもりと
咲ききった
ピンクの間に

生きている
見上げてる
さくらの下に

2008年 4月19日

くちびるにはなうたーvol.101 「隣りの空き地」

家の隣に空き地がありました。正確には空き地ではなく畑。引っ越してきたときに、キャベツが一面に、整然と並んでいて、モンシロチョウが無数に飛び交っていました。幼稚園児の行列がやってきて「ここがキャベツ畑、モンシロチョウが飛んでいますよー!」と先生から説明を受けていました。しかしそのキャベツが収穫されることなく、時期も大分過ぎた頃にショベルカーで一斉に掘り起こされたときから、不安はよぎっていたのです。この空き地の未来が長くはないことを。今その元空き地には無数のおじさんがやってきて、朝からどどどどどどという音と共に働いています。「危ない危ない!」「よく見てよー!」など大きな声が飛び交っています。家を建てるのです。7軒も!空き地の前で行き止まりだった道が延びて、わが家は住宅地の隅っこではなく、並びの一軒になるのです。気になるのは音のこと。隣は空き地だからと、ピアノを置くことを許された物件でした。お隣にもそのまたお隣にも家が建つんだって。どうなるわが家!つづく。

♪「風をみる」

花びらが
風のかたちを
なぞってる
ながれて
うかんで
おちている
人もまた
風にふかれて
踊るでしょう

2008年 4月19日

くちびるにはなうたーvol.102「オーヴェールの静かな朝」

ギタリストの坂元昭二さんの、新しいアルバムに参加しました。昨日、アルバムが手元に届いて、林を背に遠くを見る、坂元さんのジャケットを見ながらこれを書いています。坂元さんは、私が子供の頃から愛して止まないドラマ「北の国から」のサウンドトラックで演奏していたギタリストです。ギターのタッチ一つで、こんなに多くの記憶がよみがえるものなんだと、坂元さんの演奏を聴いているといつも驚くのです。今回のアルバムでは、坂元さんの曲に歌詞を付けて歌わせていただくという大仕事をいただきました。うれしかったなあ。そして不安でした。インストのアルバムに1曲だけ歌が入って違和感なく共鳴できるかしら。でも、静かな風景を音にしたような曲達の中で、私の歌とピアノもそっとたたずんでいました。と私は思ったよ。みなさんの耳でも確かめてみてくださいな。「オーヴェールの静かな朝」4月25日発売。ディセンバーレコード/DR-004/¥2,800(税込)/ディセンバーレコード通販、あるいは大手CDショップ店頭でお取り寄せ下さい。
坂元昭二HP http://www.december.co.jp

♪「ことば」

通じれば
あんしん
無くなれば
さがしだす

行き来する
かたちない
気持ちだけ
人と人の間

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