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くちびるにはなうた

2006年4月〜求人誌「週間FREE」誌上で連載中

毒も花もある日々のうた

これまでしてきた仕事や、今の仕事やくらしについて書いています

2007年 9月3日 

くちびるにはなうたーvol.69 「写真」

恵比寿にある現代写真美術館に行って来た。学芸員が所蔵作品の中から厳選したという写真が展示されていた。有名らしき写真家たちの写真、テーマは「会話する人たち」「死」「いのち」など。ふむ。今日はこの日の雑感を書きます。
私は自然を写す写真家がとても好きです。極寒の地の風景、動物たち、熱帯林や砂漠、海の奥底や南極の流氷。自分ではなかなか見に行けないそれらのものを、見続けた人の細かい視点で見ることができるからです。
でも人の日常を写していく写真を、芸術として仕事や表現方法にするのは大変だなー、と単純に思いました。どんな有名な人が素晴らしいテクニックを駆使して切り取った街や人のワンシーンよりも、自分や身近な人が経験したものを携帯電話のカメラで切り取った一枚の方が鮮やかに見えたりする。記憶や感覚に直接訴えるものとして、強烈だからです。音楽や映画や小説をつくることなんかより、ずっと日常的な行為である写真撮影は、間接的な物語に接する場として難しい、と思ってしまいました。自分で撮る以外にも、私たちの生活は、報道やファッションや、あらゆるジャンルの写真にまみれています。だから写真を芸術として楽しむことが難しくなっちゃったのかな。どうなんでしょう?学芸員さん?

♪「たまにある」

自転車こいで
るるるると
のんびり歌って走ってる

うしろに走る人の息
たったったったと
走る音

しばらくずーっと同じ音
おんなじ速さで進む他人

2007年 9月10日 

くちびるにはなうたーvol.70 「台風の夜」

9月7日の明け方、大きな台風が上陸しました。大荒れの前日6日は、楽しみにしていたライブの日。石塚明由子さんというシンガーと一緒に作るイベントの3回目でした。この日の会場である中目黒の「楽や」というお店は、ステージの後ろがガラス張りになっていて外が見える環境。。窓の外には公園の木が見えます。こ の日の楽やは、嵐がわかりやすくステージの後ろにある、という状況でした。お客さんは、荒れ狂う木々を背景に、バラードを聞いたりしていたわけです。そう。お客さんが来てくれたのです!半分以上の人々からキャンセルの連絡が入る中、帰れなくなるかもしれないこの夜に集まってくれた人々には、妙な団結力が生まれていた ような。緊急時に偶然居合わせてしまったような。何かあっても他の人がいれば大丈夫、というような。そしてみんなで歌ったりして。変な夜だったなあ。

ライブも無事に終わり、お客さんも無事に帰れて(水戸から来てくださった方々は帰宅に半日以上かかってしまったそうな・・・本当にありがとうございました)、翌日、共演したパーカッションのぴーすけさんからメールが。「台風のおかげで忘れられないライブになりましたね。」そうだね。おかげ、という感じ方。人は 自然のこと壊したり、自然に壊されたり脅かされたりしながら付き合っていくんだなあ。一緒に居合わせてくれる人がいて。

いろんなことに感謝した日でした。ピース。





♪「にごり水」



嵐がすぎて

川あふれ

河原の花壇が

一夜できえた



ごうごうごうと

流れる水は

茶色の絵の具を

溶かした色



またそのうちに

戻るでしょう

また透明に

澄むのでしょう

2007年 9月17日

くちびるにはなうたーvol.71 「はじめての礼拝」

友人は趣味で長年ヴァイオリンを弾いていますが、教会でオルガンも弾いているとのこと。彼がどんなオルガンを弾いているのか聞きたくて、葛飾区の小さな教会に一緒に行ってみることにしました。至ってラフな格好。ジーパンにTシャツ、髪をふさふさ立てて、足踏みオルガンの前に座った彼は少々緊張気味。礼拝が始まると、私は友人の奥さんの隣りで、見よう見まねで聖書を広げ、歌い、跪いてお祈りをしました。練習不足を嘆いていた友人のオルガンは、とても美しい音で教会の大切な時間を埋めていきました。見ず知らずの人と一緒に初めて歌った歌は、古く小さな木の教会の天井で、オルガンと一緒にやんわりと響いていました。
「人とのつながりが大事なんだ」と帰りの車の中で彼が言いました。それが宗教でもなんでもいいんだ。地域の人たちが集まって何かをするのが大事なんだ、と。ふーん。長年付き合ってきた友人の、ひとつの習慣を一緒にしてみたら、今まで知らなかった顔がありました。
音楽はいいなあ。私は相変わらずこう思いながら、彼が淡々と大事な話をするのを聞いていました。ピース。

♪「足踏みオルガン」

はじめて弾いた鍵盤は
空気が音になりました

足で送った透明な
空気が音になりました

指で押したら
ららららら
空気が音になりました

2007年 9月24日

くちびるにはなうたーvol.72 「小笠原前夜」

いつもこの欄の文字は小さくて、読みにくいなあ。と思われている方が多いでしょう。ごめんなさい。これでもいつもはじめに書いたものを1/3くらい減らしているのです。削りきれずまた多いなあ、と思いながら送る原稿。少ない言葉で情景がぱーっと広がるような文章を書きたいなあ。
さて。
今日書きたいことは「明日から小笠原へ行って来ます。どきどきしています。」ということそれだけ。ずっと行きたかったのです、小笠原諸島。今回は父島という一番大きな島へ。東京の芝浦ふ頭から25時間船に揺られて行きます。船がどうしても苦手な同居人のちーちゃんは、小笠原へは一生行けないんだなあ、とつぶやいていました。遠い外国へは飛行機で行けても、東京都の島へは行けない現実。
父島はこれまで一度もどことも陸続きになったことがないため、独自の生態系を持っていて、世界中でここにしかいない!生き物がたくさん居るんだって。どきどきするなあ。イルカと泳げるかなあ。星がすごいかなあ。
これくらいの原稿量がちょうどいいんだなあ。小笠原レポートをお楽しみに。ピース。

♪「島へ行く準備」

まず水着
それからサンダル
シュノーケル

別冊カドカワ
ミスチル特集
林芙美子の傑作集

かばんをひとつ
ぽろんと下げて
サンダルはいて
行って来まーす

 

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